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社会文化学部の誕生
大手前女子大学に2つ目の学部を誕生させてはどうかという話がささやかれるようになったのは、今から3年前の平成9年の春、米山俊直学長が就任された年のことだった。
その年の暮、文学部に比較文化・比較文学専攻の博士課程の認可が下りたと同時に、新学部設置の準備室が設けられた。
我学園の志望者状況は、平成6年に大学、短期大学への応募合計が1万人を越えたのをピークに平成7年の阪神大震災の直撃を受け、大学校舎は全壊。翌年復旧出来はしたものの、長引く経済不況と就職難により、女子大への風当りは大変な逆風となり、平成11年にはついに大学・短期大学両大学において定員を割り込むという最悪の結果を迎えることとなった。
このような状況になることは、ある程度予測はしていたとはいえ、こんなに早い時期におとずれるとは思っていなかった。特に短期大学の人気の落ち込みは激しく、伊丹キャンパスに於て魅力的な学部を設置して大学の生き残りを計ることが最重要課題となった。
そこで提案されたのが、社会文化学部(人間環境学科・社会情報学科)だった。新しい学部としての条件は、
1.学生にアピールすること
2.阪神間に競争学部がないこと
3.学際的な教科内容
4.男女共学
と、従来の短期大学にあった秘書科の改組転換としての申請の枠内で決断しなければならなかった。
大学のユニバーサリゼーションがさけばれる昨今、既存の学問体系の学部は阪神間にいくつも存在しており、新しくつくっても学生確保は難しそうだろうということで、考えられたのが人間環境という、環境の学問領域の学科と社会情報という情報リテラシーをトゥールとする社会学系の学科で、この2つの学科を社会文化という概念でくくり学部名とした。結果的にこの学部は日本初ということになったが、それ故文部省との接渉で、設置の趣旨とカリキュラムとの整合性の筋立てに苦労させられた。
それにも増して説明を求められたが、学生確保の見通しについてだった。
数度にわたる文部省との接渉で、そのたびごとに担当者が変わるため、一からの説明を私が練りなおさなければならなかった。この交渉を続けているうちに、是が非でも学生を集めてやろうという気になった。そこで新学部の学生募集の戦略は、
1.既設学部との同時共学化
2.綿密な入試説明会
3.丁寧なキャンパス見学会
4.メディア・ミックスによる広報戦略
などの点を考慮した。「大手前は共学になる」ということを徹底したかったので、既設の文学部を男子学生にアピールするよう、昨年春に人文科学部と名称変更した。この学部名の変更と大学名の変更について早目の広報が打てたことが効を奏し、その後の入試キャンペーンがやり易くなった。
新学部の広報のポイントは学部名でなく、2つの学科名を強調した。学科名の方がカリキュラムとの関連づけがしやすく、類似学科もいくつか存在していたからだ。また、近隣大学の類似学科とのカリキュラム比較表を作成し、本学の特色をアピールした。
人文科学部と名前が変わって、夏のキャンパス見学会に初めて男子学生を迎えても、私鉄沿線の駅の看板に「大手前大学」の名称変更ポスターを見ても、新学部にどれくらい学生が来てくれるかは不安だった。
昨年度新設された学部を見ると、合計26学部あり、その平均応募倍率は8.7倍だった。従って200名の8.7倍である1740名は何とかクリヤーしたかった。また、過去数年の新学部の応募ランキングを見ても、人気学部は必ずしも一定ではない。つまり、学生は学部内容の他に大学の知名度、偏差値、地の利、教育内容さらには就職実績(予想)などを見て総合的に判断しているのだろうと考えられる。
従って大学案内では学部のカリキュラムの特色(what to teach)だけでなく、教育方法(how to teach)も意識して盛り込むようにした。この新学部構想にあたっての教育システムにいろいろな工夫を凝らした案が、
1.情報リテラシー
2.国際理解能力
3.自己表現能力
などの能力を養う学生中心の教育である。これを実現するためにStudy for Life 学生支援システムとカリキュラム・アドバイザーという2つの特長的なシステムが生まれた。
Study for Life 学生支援システムは学生をどうしても成績で見てしまう教授の宿命から脱却し、成績は云うに及ばず、運動神経や趣味、資格、ボランティア精神や交友関係まで、できるだけ多くの事項を学生1人1人のファイルに記載し、データ保管し、それをすべての教員が必要な時に一覧し、また書き込めるシステムである。
このような学生に関わる情報を学内で共有し活用することで、学生の満足度を高め、教員の指導力にもプラスに効果が出るよう工夫したい。
カリキュラム・アドバイザーの考え方はエンロール・マネジメントというアメリカの大学で行われている学生支援の方法からヒントを得たものだ。従来の入試・教務・学生・会計・就職といった大学の組織は縦割りで、学生の視点から見ると必ずしもアトラクティブではない。
学生が入学してから卒業するまで、それぞれの段階でその時期に合ったプログラムやサービスを提供し、支援していくマネジメントが、エンロールメント率を上げるシステムである。このような考え方のもとに、社会文化学部では従来のクラス担任生よりきめ細かいカリキュラムアドバイザー制を取って正に親切な大学を目指そうとしている。
今、入試が終り、当初の目標を超える定員の約9倍の応募を集めることが出来、肩をなでおろしている。さらに驚くべきことに、一般入試の歩留り率が両学科とも70%を超えたことである、この数値は予想をはるかに超える結果となり新入生の実員が大人数になったが、必ずこの栄えある1期生が4年後それぞれの目標を達成し巣立って行かれんことを切に祈って本稿を終えることにしたい。
(私学経営2001年2月号)
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