このところ、NHKの朝ドラで「暮らしの手帳」の大橋鎭子さんを素材にした「とと姉ちゃん」を録画して見ています。このドラマは私に大学時代のいろいろなことを思い出させてくれます。
大学1年当時、このドラマから15年くらい後、私は大学から遠く離れた成城に下宿していました。
下宿の女主人が母の友達の友達だと言うことで、そこから1時間以上かけて大学に通っていました。当時、女の子を一人で県外に出すのはとても勇気のいることで、母は知り合いの人の下宿でないと安心できなかったのです。(もちろん次の年には学校推薦の近い下宿に移りましたが。)
成城はその当時もう高級住宅地で、ちょっと歩くと石原裕次郎さんはじめ有名なスターのお宅や、有名人のお宅が軒を連ねていて、「とと姉ちゃん」の「花山さん」のモデルの花森安治さんのお宅もありました。「暮らしの手帳」は発足から15、6年で押しも押されもせぬ立派な雑誌に成長し、花森安治さんも有名人になっていました。
ある日下宿の小母さんが「スーパーで花森安治に会ったよ。今日もスカートをはいていた。あの人も変わっているねえ」と言います。
「何でスカートをはいているの?」と、聞きますと、
「『男女同権。女がズボンをはくのだから、男がスカートをはいて何が悪い』と言っているんだけれど、やっぱりおかしいよね」と、言っていました。
当時何かにつけて「男女同権」と言いたてる風潮がありました。花森安治さんのスカートには、そんな熱をちょっと醒ませようとするエスプリまたはアイロニーがあったのかもしれません。
このドラマを見るまでは「暮らしの手帳」はアメリカの「コンシューマース・レポート」の真似だとばかり思っていました。
ところが「直線立ちの服」など、オリジナリティー溢れるアイディアの数々を見て、真似ではないメッセージがあることを知りました。
そういえば、私が小さいころ、夏になると母は簡単服と呼ばれた直線立ちの家庭着を愛用していました。
花森安治さんのアイディアは暮らしの中に定着していたのですね。