英検1級合格。その快挙を成し遂げた高校3年生の三船さんと、彼女の歩みを間近で見守り、支え続けてきた担任の田中先生、英語科の村上先生、そしてネイティブ教員のマーク先生。4人の言葉を交えながら、合格までの道のりと、その根底にある学びへの姿勢についてお話を伺いました。

「合格を知った瞬間は、マジで信じられなくて。画面を見て、『え、ほんまに?』って声が出ました」。高校3年生の三船さんは、照れくさそうに、でも晴れやかな表情で振り返ります。
英語学習者にとって一つの到達点である英検1級。しかし、彼女にとってその道のりは決して平坦ではありませんでした。実は1次試験から数えると何度も不合格を経験しており、特に2次試験で落ちた時は、受験勉強との両立に悩み、諦めそうになったこともあったと言います。「でも、やっぱり、せっかくここまで頑張ってきたから、最後の最後にちゃんと結果を出したいっていう……なんて言うんですかね、自分の中の『お馬鹿なプライド』があったんです。やるなら一番高いところっしょ、みたいな(笑)」。
その「お馬鹿なプライド」こそが彼女の強さだと、マーク先生は確信していました。「彼女を初めて教えた時から、周りの子への優しさと、それでいて自分の中に芯がある『ナチュラルリーダー』としての素質を感じていました」とマーク先生は語ります。三船さんには、自分のなりたいものになれる特別なキャパシティがある。プレッシャーを感じる繊細な一面もありながら、それを乗り越えていく力があるのだと、マーク先生は彼女の可能性を誰よりも信じていました。

三船さんの挑戦を支えたのは、先生方だけではありません。彼女が何度も1級に挑戦し続けられた裏には、ご家族の献身的な支えがありました。特に、毎日のように繰り返される送迎は、三船さんの心に申し訳なさと感謝を同時に刻んでいました。
「1級は受験料も高いし、会場も遠い。お母さんは仕事や家事で忙しい中、私のために毎日学校まで迎えに来てくれるんです。それなのに、落ちるたびに『あぁ、またこれだけ負担をかけておいて受からんかった……』って、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまって」。何度も不合格を重ねる自分に、もどかしさを感じる日々。しかし、そんな葛藤の中にいた彼女を救ったのは、家族の「そのままを受け止める」優しさでした。
「家族は『合格してね』ってプレッシャーをかけるんじゃなくて、『準備したことが大事やから』って言ってくれる。不合格で悲しい時、その気持ちを否定せずに『大丈夫だよ』って受け止めてくれたのが、本当に救いでした」。
担任の田中先生も、三船さんの様子を「港(ホーム)」のような立場で見守っていました。「彼女は自分でやるべきことが分かっている。だから僕は、あえて手を出さずに、ミスをしたらこっちが責任を取ればいいというスタンスでした。学校は、生徒が出ていっては帰ってくる『大きな港』であればいい。僕はその砦として、彼女が疲れた時に帰ってこられる安全地帯を守るだけでした」。

三船さんの学びを、単なる暗記から「生きた対話」へと変えたのが村上先生の授業でした。「村上先生は、冠詞の『a』や『the』一つ、助動詞の使い方一つにこだわって、『書いた人がどんな心でこの言葉を選んだのか』を読み解く授業をしてくれるんです」と三船さんは語ります。
その学びが、彼女の中で一つの曲と結びつきました。テイラー・スウィフトの『We Are Never Ever Getting Back Together』です。三船さんは、この曲のサビで使われている時制に衝撃を受けました。 「サビが未来の意志を表す『will』ではなく、現在進行形(be -ing)の『are getting back together』で歌われていることに気づいたんです。現在進行形で未来を表すのは、単なる一時的な感情じゃなくて、既にもう『決まったこと』としての強い響きがある。先生に教わったニュアンスの違いを意識して聴いた時、『あ、これは絶対に、計画的に、もう二度と寄りを戻さないっていう強い決意なんだ!』って分かって。英語の『心』が身体に入ってきた気がして、勉強が一気に楽しくなりました」。
村上先生は、三船さんの姿勢をこう評します。「彼女は、自分を追い込むための『仕組み』を自ら作る生徒です。毎日、習った構文を使って日記を英作文して送ってくる。彼女はただ知識を覚えるのではなく、それを自分自身のクオリティにまで仕上げてアウトプットできる。点数という花だけではなく、人間味という根っこを磨こうとする姿勢があるんです」。信となりました。
今回の2次試験対策で、三船さんが意識的に変えたのは「テクニックへの執着を捨てること」でした。
「前回不合格だった時は、外部のオンラインレッスンで時間配分とかのテクニックばかり気にしていたんです。でも、マーク先生との練習は全然違いました。先生、タイマーを隠して練習するんですよ(笑)。『時間は気にしなくていい。それより内容を大事にしよう、印象に残る面白いスピーチをしよう』って」。
マーク先生は、三船さんに「大人の考え方」を求めました。 「AかBかという単純な答えではなく、二つの異なる見方を示した上で、自分の判断を出す。例えば、日本の中にも実はいろんなダイバーシティ(多様性)があって、いろんな考え方や生活がある。一つの正解に縛られず、多角的な関係性を見せることの大切さを教わりました。その練習を通じて、一般論を暗記する苦しい対策から、自分がどう考えるかを自由に話す楽しさへ変わっていったんです」。
こうした学びを経て1級に合格した三船さんですが、その背景には、海外での「言葉が通じない」という苦い経験もありました。高校2年生の冬、祖父母と訪れたニューヨークでの出来事です。
「ホテルの受付でクレジットカードを出すときに、スタッフの方に『PIN code(暗証番号)』って言われたんです。でもそれがどうしても『pen(ペン)』にしか聞こえなくて。え、ペンなんてどこにあるの?ってオタワタしていたら、受付の人に大笑いされました(笑)」。
また、修学旅行のマレーシアでも、スピーカーから流れるアナウンスが聞き取れず、「私、全然勉強足りてないわ」とハッとしたと言います。こうした「教科書通りにいかない」経験が、彼女の「もっと深く学びたい」という欲求に火をつけました。

三船さんは、自分の学びの原動力をユニークな言葉で表現します。 「私のエンジンって、そんなに立派なものじゃないんです。ただの『もったいない星人』なんですよ。この授業で先生が言ったことを聞き逃したら損。この場で吸収できる全てを吸収しなきゃもったいない!っていう感覚なんです。自分を学ぶ場所として最大効率で使わないと損じゃん、っていう(笑)」。
そんな彼女に対し、マーク先生は「英語はスポーツや音楽と同じ『練習』だ」と説きます。村上先生や田中先生、日本の先生方が作ってくれた強固な土台の上に、マーク先生との実践が加わり、今回の合格へと繋がりました。

一級に合格した今、三船さんはその資格を「自信という名の武器」だと捉えています。 「一級に受かったことで、『私には英語があるぞ』という自信が持てた。将来は、研究の道に進んで、英語を武器に世界の人を喜ばせたい。田中先生や両親のように、周りにいい影響を与えられる大人になりたいんです」。
最後に、後輩たちへのメッセージをくれました。 「大手前高松は、頑張る気持ちを尊重してくれる場所です。先生に相談さえすれば、教育は誰にでも開かれているし、参加のハードルがめちゃくちゃ低い。野球やサッカー、お笑いまで、いろんなことに打ち込んでいる仲間がいるこの場所には、ポジティブな『エネルギーの循環』があります。ただここにいるだけで元気が出てくる、そんな学校の環境を、ぜひ最大限に使い倒してほしいです」。
一級合格という勲章は、彼女がこの学校という「港」で、素晴らしい師や仲間と共に、自らの手で磨き上げた「自信」そのものでした。三船さんの歩みは、ここからさらに広い世界へと続いていきます。